<解説:日銀のCBDC(中央銀行デジタル通貨)への取組>

 

―目次―

1.    CBDCの狙いと目的

2. 実証実験の進捗状況

3. 他国のCBDCの状況

4. まとめ

<詳説:日銀のCBDCが果たす「民間決済システムの補完的役割」とは?>

 

 

1. CBDCの狙いと目的

 

日本銀行(以下、日銀)は、**中央銀行デジタル通貨(CBDC: Central Bank Digital Currency**の研究を進めていますが、現時点では「発行を決定していない」との立場を取っています。しかし、将来的な発行の可能性に備え、実証実験を段階的に進めています。

 日銀がCBDCに取り組む目的は以下のように整理できます。

 

(1) デジタル社会への対応

現金利用が減少し、キャッシュレス決済が普及する中、中央銀行として安定的な決済手段を提供する必要がある。

(2) 決済システムの強靭化

災害時やシステム障害時でも安定した決済手段を確保する。

(3) 民間デジタル決済との補完

民間のキャッシュレス決済手段(クレジットカード、QRコード決済など)と競合するのではなく、補完的な役割を果たす。

(4) 国際競争力の確保

中国のデジタル人民元や、米欧のCBDCの動きに対抗し、日本経済の競争力を維持する。

 

2. 実証実験の進捗状況

 

日銀は、CBDCの技術的・制度的な課題を検証するため、3つの段階で実証実験を進めています。

 

(1)1段階(20214月~20223月)

• 基本的なCBDCの機能(発行・流通・償却)が技術的に可能かを確認。

(2)2段階(20224月~20233月)

• より高度な機能(オフライン決済、プライバシー保護、取引制限など)の検証。

(3)3段階(20234月~2024年)

**「パイロット実験」**として、銀行や決済事業者と連携し、実際の環境に近い形での検証を開始。

 

日銀は「2026年頃までに発行の是非を判断する」としており、引き続き検討を進めています。

 

3. 他国のCBDCの状況

 

CBDCの導入は世界的に進んでおり、特に中国、欧州、アメリカが注目されています。

 

(1) 中国

**デジタル人民元(e-CNY**の試験運用を開始済み。

• 既に複数の都市や国際イベント(北京五輪など)で利用され、商業銀行経由で市民が利用可能。

 

(2) 欧州

• 欧州中央銀行(ECB)はデジタルユーロを2026年頃に発行予定。

• 現在は設計や法整備を進めている段階。

 

(3) アメリカ

FRB(米連邦準備制度)は慎重な立場を取っており、まだ発行を決定していない。

• プライバシーや銀行システムへの影響を懸念しており、慎重に検討中。

 

(4) その他

• スウェーデンは「eクローナ」の実証実験を進め、キャッシュレス社会への移行を加速。

• インド、ブラジル、韓国などもCBDCの実験を実施中。

 

4. まとめ

• 日銀は「CBDCを発行するかどうか未定」としつつも、技術的な準備を進めている。

2023年からパイロット実験を開始し、2026年頃に発行の是非を判断。

• 中国はデジタル人民元をすでに運用し、欧州は2026年頃発行予定、米国は慎重な姿勢。

 

日銀のCBDCは、既存の決済手段を補完する役割が期待される一方、プライバシー保護や金融政策への影響など多くの課題を抱えています。今後の展開に注目が集まります。

 

 

<詳説:日銀のCBDCが果たす「民間決済システムの補完的役割」とは?>

 

日銀のCBDC(中央銀行デジタル通貨)は、既存の民間決済システム(クレジットカード、QRコード決済、電子マネーなど)と競合するのではなく、補完的な役割を果たすとされています。具体的には、以下のような役割や効果が考えられます。

 

1. 補完的役割の具体例

 

(1) 金融包摂の強化(誰でも使える決済手段)

• 民間決済手段(クレジットカードや電子マネー)を利用できない人も使える

→ クレジットカードを持てない人(信用スコアの低い人)、スマホを持たない高齢者でもCBDCを利用可能。

• 手数料なしで決済できる可能性

→ クレジットカード決済は店舗側が手数料を負担するが、CBDCは手数料ゼロの可能性がある。

 

(2) 災害時やシステム障害時の決済手段として

• オフライン決済が可能なCBDCを想定

→ 大規模災害時や通信障害時に、電子マネーや銀行振込が使えなくてもCBDCなら決済が可能。

• 民間決済システムがダウンしても補完できる

→ 例えば、大手決済サービスが一時的に利用不能になってもCBDCが代替手段となる。

 

(3) 決済の公平性・透明性の向上

• 銀行口座を持たない人も利用可能

→ 銀行口座がなくても、デジタルウォレットにCBDCを入れて使える設計が考えられる。

• 中央銀行が直接提供するため、安定性が高い

→ 民間の決済サービスは倒産リスクがあるが、CBDCは中央銀行が保証するため安全性が高い。

 

(4) 決済インフラの強化(民間のコスト削減)

• 中小企業や個人事業主の決済コスト削減

→ クレジットカード決済手数料(23%)や振込手数料が不要になれば、店舗や事業者の負担軽減につながる。

• 金融機関の送金コスト削減

CBDCを使った送金が現金輸送や既存の銀行振込よりも安価になる可能性。

 

2. 他国のCBDCも「補完的役割」なのか?

 

各国のCBDCの狙いは異なるものの、多くの国では「民間決済と競争するのではなく補完する」という考えが基本になっています。

 

(1) 中国(デジタル人民元)

• 政府主導の決済手段としての役割が強い

→ アリペイやウィーチャットペイの寡占状態を防ぎ、民間決済の依存度を下げることが目的。

• 金融システムの安定化

→ 商業銀行を通じてCBDCを提供し、既存の銀行システムと共存。

 

(2) 欧州(デジタルユーロ)

• 民間決済の代替ではなく補完

→ クレジットカード会社や銀行の決済システムと併存しながら、「ユーロ圏全体で統一的に使えるデジタル決済手段」を提供。

• 現金のデジタル版としての位置付け

→ プライバシーを重視しつつ、キャッシュレス化が進む中で現金の役割をデジタルで維持。

 

(3) アメリカ(CBDC構想)

• 補完的な役割を強調

FRB(米連邦準備制度理事会)は、「民間の決済システムを補完する形でのCBDC導入」を検討。

• 銀行業界への影響を懸念

CBDCが普及しすぎると、銀行から預金がCBDCに流れる可能性があり、銀行システムへの影響を避けるため慎重に議論。

 

3. まとめ

• 日銀のCBDCは「民間決済システムの補完」として設計されており、銀行口座を持たない人や災害時の決済手段としても機能する可能性がある。

• 決済コストの削減や、現金に近いデジタル決済の提供を目指している。

• 他国のCBDCも基本的に民間決済と補完関係を築く形を想定しているが、中国のように政府の統制を強める目的もある国もある。

 

今後、日銀がどのような設計を採用するかによって、日本の決済インフラに与える影響が変わってきそうです。

 

 

 

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