<解説: ITと金融>

 

IT企業が提供する主な金融サービス

●なぜIT企業が金融サービスを提供するのか?

IT企業が金融参入する際の課題

●日本でIT企業が金融サービスを提供する方法

● 今後期待されるCBDC( 中央銀行デジタル通貨 )の意義 

●まとめ

 

 

近年、AppleGoogleAmazon、楽天などのIT企業が金融サービスに参入し、銀行や証券会社と競争するようになっています。この動きを「フィンテック(FinTech)」と呼び、テクノロジーを活用した新しい金融サービスが急速に普及しています。

 

1. IT企業が提供する主な金融サービス

 

    決済・送金サービス(キャッシュレス)

IT企業が最も力を入れている分野が、決済・送金サービスです。スマホアプリを活用したQR決済、電子マネー、スマートフォン決済が急速に普及しています。

 

特徴:

• スマホだけで簡単に決済・送金が可能(現金不要)

• 銀行口座不要のサービスも増加(クレジットカードやプリペイド式)

• 即時決済、手数料の安さ、ポイント還元が魅力

規制:

• 日本では「資金移動業登録」が必要(銀行とは異なり、1100万円以下の制限あり)

 

    ネット銀行(IT企業が銀行を運営)

IT企業が銀行を設立し、独自の金融サービスを提供するケースも増えています。

 

ネット銀行 親会社(IT企業) の特徴:

楽天銀行 :楽天 ネット銀行最大級の預金残高

PayPay銀行: ソフトバンク キャッシュレス決済との連携が強み

auじぶん銀行KDDI 携帯料金と連携、住宅ローン強化

ソニー銀行: ソニー 資産運用型のネット銀行

 

特徴:

• 実店舗を持たず、スマホ・PCだけで口座開設・取引が可能

ATM手数料が安く、振込手数料無料のプランも多い

• クレジットカードやスマホ決済との連携が強い

規制:

• 「銀行免許」が必要(金融庁の厳格な審査あり)

 

クレジットカード・ローン(BNPL含む)

IT企業はクレジットカードや後払いサービス(BNPL)にも参入しています。

特徴:

• クレジットカードの発行・管理がスマホで完結

**BNPLBuy Now, Pay Later**という「あと払い」サービスが普及

• ポイント還元やキャッシュバックで利用促進

規制:

• 「貸金業登録」が必要(ローン・後払い)

 

証券・投資サービス(ロボアド・仮想通貨)

IT企業は投資・資産運用分野にも参入しています。

特徴:

• スマホアプリで簡単に投資・資産運用が可能

AIやロボアドバイザーによる自動投資が普及

• 仮想通貨(暗号資産)取引も活発化

規制:

• 「金融商品取引業登録」が必要(証券・投資関連)

• 仮想通貨取引は「暗号資産交換業登録」が必要

 

2. なぜIT企業が金融サービスを提供するのか?

 

① 既存の銀行・金融機関の手数料が高い

→ ネット銀行やフィンテック企業は低コストで金融サービスを提供し、手数料の安さで競争

② スマホと相性が良い

→ アプリで簡単に決済・投資ができるため、特に若年層に人気

③ ビッグデータを活用できる

→ 購買履歴・行動データを活かして個別最適な金融サービスを提供(例:AIによる与信判断)

④ 既存のビジネスと相乗効果

→ 例えば、AmazonEC、楽天はショッピングと金融を組み合わせて強みを発揮

 

3. IT企業が金融参入する際の課題

 

金融規制が厳しい

→ 銀行、証券、保険などは金融庁の厳しい規制を受けるため、単独で参入が難しい(Appleもゴールドマン・サックスと提携)

既存金融機関との競争

→ メガバンクや証券会社もデジタル化を進めており、競争が激化

セキュリティ・不正対策

→ 個人情報・資金を扱うため、サイバー攻撃や詐欺への対策が重要

 

4. 日本でIT企業が金融サービスを提供する方法

 

 日本では、以下の3つの方法でIT企業が金融サービスを提供できます。

1. 銀行免許を取得して独自に銀行業務を行う(楽天銀行、ソニー銀行など)

2. 既存の銀行・証券会社と提携し、金融サービスを提供(Appleのような形)

3. 銀行以外の登録(資金移動業、貸金業など)を取得し、一部の金融業務を提供(PayPay、メルペイなど)

 

5.  今後期待されるCBDC( 中央銀行デジタル通貨 )の意義

 

  1. 透明性と信頼性の向上 CBDCは中央銀行によって発行されるため、信頼性が高く、消費者やビジネスに対して透明性が確保されます。IT企業が提供する金融サービスにおいても、ユーザーが安心して利用できる環境が整います。
  2. 決済コストの削減 CBDCを利用することで、従来の決済システムと比較してコストが削減されます。IT企業は低コストの金融サービスを提供しやすくなり、競争力が向上します。
  3. 金融包摂の促進 銀行口座を持たない人々にもアクセスできる金融サービスを提供することで、金融包摂が促進されます。特に、IT企業が展開するキャッシュレス決済やモバイルバンキングが普及することで、CBDCの恩恵が広がります。
  4. 効率的なマネーロンダリング対策 CBDCはトランザクションの追跡が容易であり、マネーロンダリングや不正行為のリスクが低減されます。IT企業が提供する金融サービスでも、安全性が向上します。
  5. イノベーションの促進 CBDCの導入により、スマートコントラクトや分散型金融(DeFi)などの新しい技術が普及し、IT企業が提供する金融サービスに革新がもたらされます。

   これらの要素により、CBDCIT企業の金融サービスにおいても重要な役割を果たすと考えられます。

 

まとめ

 

IT企業は「決済・送金、ネット銀行、クレカ・ローン、投資・仮想通貨」など様々な金融サービスを提供している

• 日本では銀行免許がないと預金業務はできないが、資金移動業や貸金業などの免許を取得すれば一部の金融サービスは提供可能

• 既存の銀行・金融機関と提携する形でのサービス提供も多い(例:Apple × ゴールドマン・サックス)

 

 今後も、IT企業と金融業界の競争はますます激しくなっていくでしょう。

 

 

 

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